12Vトリガーとリレーで作るDIY電源連動入力ソース切替AV切替器(電源なし超手抜き自作)

 

高級なパワーアンプと高級なスピーカーを手に入れたあと、マルチチャンネルで映画などを見るときのAVアンプの構成と、DACやネットワークストリーマーからのピュアな再生とでアンプ・スピーカーを共通して使いたいと思うものです。プリアンプ、プリメインなどの構成の場合入力ソースの切り替えに困難はないかもしれません。残念ながら当方の構成は、「プリ」段階のない、(DACまたはAVアンプ)→パワーアンプ→スピーカーというものです。これの切り替えと電源連動を自動的にやらせたいというのが今回の目標になります。

前提

  • 入力ソース1 AVアンプ(フロントRCA出力、12Vトリガー2系統あり)
  • 入力ソース2 DAC(XLR出力、12Vトリガーあり)
  • パワーアンプ1台(XLR入力と12Vトリガー入力あり)
  • フロントスピーカー1組

AVアンプだけの構成の場合は難しくありません。ピュアオーディオを目指す方々はやはりAVアンプの音質には我慢できず、ちょっと上のパワーアンプとDACを導入されているのではないかと思います。そんな環境でスピーカーは1組、入力ソースが複数となると、プリアンプを間に挟んで、プリアンプで入力切替を行うといった構成が正攻法ではないかと思います。

今回ここでは、無謀手抜き構成にチャレンジします。

今回のわがまま要件

  • 最高音質を誇るフロントスピーカーとパワーアンプはAVアンプからもDACからも使いたい
  • 音質をピュアではなくしてしまうようなプリアンプみたいなものは間に挟みたくない(単に予算ケチりたいだけ)
  • AVアンプ、DACとパワーアンプの電源連動と入力ソース切り替えを全自動にしたい
  • できれば切替器は電源レスにしたい

やりたい構成の構成図は次のような感じ

AVアンプ(YAMAHA)には12Vの電源コントロール用のトリガーが2系統。DAC(実際はそれとつながるネットワークプレーヤー)にも12Vトリガー出力。パワーアンプにも12Vトリガー入力があり、これらを駆使して実装します。

AVアンプの電源がオフの間はDACと繋がっており、AVアンプの電源を入れると入力ソースがAVアンプに切り替わります。またパワーアンプに入力した12VトリガーでAVアンプかDACのどちらかがオンになるとパワーアンプも自動的に電源が入ります。パワーアンプに2系統の 12Vトリガー入力があるか?と思いますが

  • 12V in
  • 12V out(pass through)

と、2つのピンジャックが実装されていることがあり、out のところを入力として使います。というのも中の回路は方向を意識した作りになっていないと思われるからです。私の場合実際これで動いています。

電源レスの可能性

AVアンプの12Vトリガー出力は 0.1A つまり 1.2Wまでの電力は供給できるとあります。この電力の範囲ならもしかしてリレーを直接駆動できるのではないかというのが「電源レス」の発想です。ごく汎用品の 12V駆動のリレーを探します。XLRのシグナルを左右通すためにどうしても2極、2系統が2つ要ります。データシートを調べます。オムロンの G5V-2 DC12 というリレーを見ると

  • DC12V
  • 消費電力 500mW
  • 接点抵抗 50mOhm

2つで1W。ぎりぎりトリガーの電力で駆動できそうです。このシリーズのリレーには高感度版といって消費電力半分のものがありますが接点抵抗が倍になります。プリレベルのシグナルなので音質に響くほどのものではないと思いますがトリガーが使える電力が小さい場合はこちらを選ぶことになったかもしれません。

リレー2つだけで作る電源連動AV切替器

そこで2つのリレーを使った切替器の回路図を考えてみます。

今回は、入力がXLR+RCAなのでこうなりましたが、XLR+XLR入力でも同様に可能です。ポイントは、GNDを共通に繋いでしまっているところ。「切り替え」だけを考えれば、入力1,入力2がGNDも含めて完全に独立していてもいいのでしょうが、そうしたところ、切替時に盛大なポップノイズが入りあまり健康的ではありませんでした。

完成品の画像はあまりにひどいのであえて公開を控えさせていただきます。べたべたのはんだ付けと被覆の溶けた空中配線でとてもお見せできるものではありません。が、動作は問題なく、音質のロスもおそらく大したことなく実用上問題ないです。

 

 

M.2 Wi-Fi Bluetooth 拡張ボード Intel AX210 vs AX211 どこが違うのか?

M.2のWi-Fi拡張カードは安い

最近のデスクトップ用マザーボードには M.2 の短い版のスロットが用意されており、そこにWi-FiとBluetoothに対応した小さな拡張カードを追加できるものが多くなりました。従来はデスクトップにWi-Fiを追加するとなると、PCI(e)スロットにボードを追加するか、Wi-Fi対応のUSBスティックを差し込むかのどちらかでした。マザーボード上にM.2スロットで拡張する利点は、サイズコンパクトなうえ、チップセットのPCIeバスへ直結できることです。

流通しているIntel製の2モデル

Intel謹製の最新版としては Wi-Fi 6e に対応した AX210 AX211 という2つのモデルが流通しています。(現時点でAX211は日本国内では入手できないようですが)どちらも日本円で2000円~3000円程度と導入しやすい安さです。この最新モデルの「規格・仕様」が気になるところですが、ネットにある情報の多くが間違っています。

いずれも対応規格は Wi-Fi 6e と Bluetooth 5.3。これが正解のようです。また最新のドライバーでは日本国内でも 2.5GHz, 5GHz, 6GHzの新しいバンドを含む3つのバンドに対応します。

問題は、AX210 と AX211 で何が違うかという点。Intelのスペック表を見比べると違いは

  • 価格
  • インターフェイス

の2点だけです。

https://ark.intel.com/content/www/us/en/ark/compare.html?productIds=204836,204837

AX210 の PCIe,USB形式のインターフェイスは多くのマザーボードが対応している標準的なもので、一方 AX211の CNVio2というのはIntelのチップセット、IntelのCPUのしかも特定のモデル、世代にだけ対応する特殊なものになります。ハード的な違いはインターフェースのみで、後述のようにソフト的には対応機能含めまったく違いがありません。

どちらを買うべきかの判断は、Intel製以外のマザーボードでの利用など汎用性を求めるなら AX210。Intelのチップセット、CPUとの組み合わせで少しでも安く組み込むなら AX211。となるはずですが、実際、単品で流通しているのは圧倒的にAX210が多く、その結果単品のAX211より単品のAX210のほうが安く売られている場合が多いようです。

つまり、個人が利用する程度では AX210の一択で、AX211のメリットはありません。

Windows上のデバイスを比較する

Windowsのデバイスマネージャーから見たのが次の画像です。PCI Express上の接続位置が微妙に異なりますが、それぞれのマザーボードのチップセットが違うせいもあるかもしれません。いずれも、PCIeとマザーボード上のUSBハブへ接続されているので、ソフト的なデメリット、CPUやメモリ負荷などの違いが生じるようには見えません。

Bluetoothデバイスの Firmware Versionを見ると 12.XXX になっており、これは、Bluetooth 5.3を意味します。

https://pureinfotech.com/check-bluetooth-version-windows-10/

結論 AX210

一部の情報にAX210はBluetooth5.2、AX211がBluetooth 5.3 などという情報もあり混乱しますが、実際は2モデルで違いはありません。また、AX210は日本のAmazonなど適価で入手可能で、AX211は流通がほとんどないか値段が異常に設定されています。結論として大量に組み込みBTOしている業者でもない限りは AX210 の選択が正解ということになりました。

 

マザーボードのBIOS更新失敗→起動不能状態の最後の手段(直接のBIOS焼き)

マザーボードお釈迦 - ことの経緯

ASUS Q670M-C-CSM マザーボードは遠隔からの監視や電源コントロールなどの管理に対応した Intel vPro に対応したQ670チップセットを搭載しています。日本国内では流通がないのでアメリカの amazon.com から購入しました。到着したところで、BIOSのバージョンが、13世代の新しめのCPUに対応していないことが判明、至急、対応している古いLGA1700のCPUを手配してBIOSのアップデートを行いました。

そこでつい手抜きをしたのが、BIOSをアップデートするほんの10分くらいの辛抱だと思ってCPUクーラーを載せずに実行、案の定BIOS書き込み50%付近で、熱暴走で電源が落ちました。マザーボードとCPUの保護機能で落ちたので、幸い、どちらもハード的には損傷はありません。

この後、これも案の定、マザーボードは起動しなくなり文字通り死にました。

死んだBIOSの復旧方法

一般的に最近のマザーボードはBIOS更新の失敗に備えていくつかの救済策が用意されています。

  • ASUS BIOS FlashBackのようにバックパネルのボタンでUSBメモリからBIOS更新ができるパターン。
  • ASUS RecoveryBIOS はBIOS更新の失敗を自動的に検出して、次の起動時に自動的に回復モードに入ります。

このいずれの救済策もダメな場合、最後の手段として、BIOSチップに直接BIOSを書き込む方法があります。

BIOSのはいわゆるFlash ROMという8本または16本足のICチップに収められています。いろんなモデルがありますがその動作は一般的に規定されていて、これも特殊ですが汎用的な機器を使って直接読み書きができます。

今回用意したのはamazon.co.jpなどでも簡単に手に入る CH341A というROMライターデバイス。

この機器を使ったBIOS更新方法はYouTubeなどで広く紹介されているので、ここではバイナリデータファイルの作り方やその手順については省略します。

ICのメーカーや型番はさておき、直接書き込みの難易度はその形状によります。

  • ソケットから抜き差しできるタイプ
  • 基盤直付けだが足が生えているタイプ
  • 基盤直付けで足が潜っているタイプ

2つまでのタイプはCH341とこれも一般的に流通しているクリップを使って接続することができます。このクリップは小さな領域でしっかり8本の足と接触させなければならないのですが多くの方が何度もやり直し、苦労しているようでした。

今回は Winbond W25Q256JVEQ という WSON8 チップがターゲットです。

問題は3つめのタイプSON8と呼ばれる、足のないICで基盤とはんだで直付けされているものです。接触できる接点はわずかにしみだしている半田のこぶだけです。このこぶさえもない場合はここで詰みです。さらに奥の手としては、はんだを溶かしてチップを分離、書き込み後元に戻すということもありえます。ただ、マザーボードが物理的に傷物になるからこれぞ最終手段になります。

コンタクトプローブツールで8ピンのBIOS ROMチップに直接アクセス

今回は、マザーに手を入れないで、直接SON8の端子にアプローチします。残念ながら先述のクリップは使えません。そこで登場するのがピン状のコンタクトプローブを8本備えたケーブル。取り扱いは少ないですがamazonでも売ってました。

このコンタクトプローブ型ケーブルですが、8x6mmの足からはみ出たはんだの小さな山にはサイズがあっておらず、ラジペンで無理やり足を押し広げて曲げます。さらに曲げた影響でプローブのバネが機能しなくなり、8本同時に確保しなくてはならない接点がさらに難しくなってしまいました。

三脚やらラジペン、クリップやら持ち出し、何百回と接点合わせを繰り返しようやく正常に読み書きできる状態を作りました。振動でも接点がくるってしまいそうな微妙な状態です。そういうしつつ無事にBIOSの書き込み完了。無事に起動する状態になりました。

壊れたBIOSを検証すると

壊れた状態のBIOSのバックアップを取りました。このバイナリデータがどの程度壊れているかを調べてみます。BIOS更新に失敗したバイナリが左、更新前の公式BIOSのバイナリが右。違いのある領域が赤で表示されています。50%ほどのところで失敗しましたが、ROM全体の前半と後半のそれぞれの前半部分で違いがみられ、この部分まで更新が進んだことがわかります。ASUSのBIOSの場合、FD44Editorというツールでマザーボードのシリアル番号、MACアドレスなどを抽出しますが、幸いこの情報は失われていませんでした。

 

 

DAC Gustard A22 (AK4499) → X26 Pro (ES9038PRO) への機材アップグレード備忘録

コロナ禍でストレスのたまる中、使わなくてもいいかもしれないお金チャレンジをしてみました。知る人ぞ知る中華DACのハイエンド製品を作る Gustard にあって、A22は旭化成のDACチップAK4499を載せた最上位モデル、X26 Pro はESS製のDACチップES9038PROを載せた最上位モデルとなっています。価格からも X26 が2割ほど上の設定となっており、レビューなどもそのとおりのやや上をいく評価となっています。

A22がX26へ行って違いが判るのか?

当方でもA22は評判通りの十分満足のいく音で、今までも特に不満はありませんでした。X26へ行ってみようかという動機付けは数々の比較レビュー、Audiosciencereviewの測定記事などで、読めば読むほど興味がわいてきたわけです。かといって、私の再生環境で、A22→X26Proのアップグレードしたところで差がわかるほどのものかはつねに疑問に思っていました。スピーカー、パワーアンプ、部屋の音響などがボトルネック、頭打ちとなれば、DACをいくら良くしたところでその違いが聞こえてこないかもしれません。そこはやってみないとわからないギャンブルだったわけです。

結果A22からX26の違い

A22を導入した時もそうでしたが、低域が一番違いの分かる部分となりました。A22より低音が締まり輪郭がよりはっきりしました。元々A22の時から若干疑いを持っていたのですが、低域がややぼわつく、ベースなどの楽器の輪郭や音程がややボケるという点。サブウーファーも導入しているため、当方のセッティングと部屋の音響の問題だろうと踏んでいました。それがX26導入でそうでなかったということが判明。低音が締まり輪郭がはっきりしました。逆にその結果、「音場」とか「サウンドステージ」との広がりという意味では小さくなったかもしれません。A22のほうが「バーーン!ドーーン!」という圧倒感があったように感じます。が、それも、音像が無駄にボケていた故なのかもしれません。

中音域、高音域ではまるで違いがわかりません。最初の設定でうっかり「NOS」設定をオンにしてしまい聞いていたところ高域がこもってこれはエイジングの問題か不具合かと焦りましたがAmazonMusicのようなストリーミング程度の音源ではNOSは初期値通りOFFが正解です。

一方で、左右の分解、定位感はA22よりもよくなった気がします。気のせいかもしれませんが。

X26には VIVID COMPOSITE GENTLE の3種類のフィルターがあります。A22にもAK4499のフィルター設定がありましたが、この差は私の駄耳ではほぼ判別できません。

やはりESSか

X26にチャレンジしてみようと思ったきっかけは、とあるヨドバシでYAMAHAのAVアンプ RX-A8A を聞いた時でした。当方自宅では RX-A3060 という2~3世代古いモデルですがESSのチップが載ったAVアンプを使っています。専用のDACには全然及ばないレベルですが、最新のモデルA8Aを店頭でほんの少し聞いたところたまたま自宅のA3060と違った透明感と高音の抜けみたいのを感じて、それならES9038PRO行けるかも?と思ったのがきっかけでした。※A3060はES9016S、A8AはES9026PRO使用の製品です

汎用DAC LSIの世界ではほぼESSか旭化成かというほぼ2択になっています。日本人としては旭化成をひいき目に見たいところですが、ここで残念ながら形成逆転、しばらくESSのお世話になろうと思います。

 

 

 

Airpulse A80 vs ONKYO GX-D90

PC デスクトップ用として10年近く愛用した ONKYO D90 は実売1万円台にしてデジタル入力からの音がピカ一でずっと気に入っていました。が、ここにきて、いよいよ買い替え欲に堪えられず同じくらいのサイズのアクティブスピーカーを探すことにしました。

候補1 KANTO TUK 

某YouTuberの自慢のPCデスクに乗っていたのを見かけてから探し出した製品です。リボンツィーターとなんといってもこの美しい造形に魅かれるものがあります。幅16cmとD90の幅12cmよりもやや大きめです。8万円クラス。ただ日本では手に入らないのが難点です。

候補2 Airpulse A80

A100 A200などの先行するシリーズの評判が非常によく、後発のA80は音色もチューニングされているというレビュー多数あり、また幅14cmとデスクトップサイズです。

そこで、まずは、KANTO TUK と Airpulse A100 の比較レビューをあたりました。(A80はサイズ違いのため比較できない)2つほど英語の記事を見つけました。結論から言えば、A100がやや上。KANTO TUKは造形の美しさでバイアスがかかって見えるのかもしれません。

結論 Airpulse A80

そこで、サイズも理想的な A80 に決定。

ONKYO D90 より上を行けるか?

ONKYO D90は定価2万円。Airpulse A80は定価8万円。値段から言ってA80がいい音を出さないはずはありません。

A80 いざ試聴

筐体はずっしり重量感があります。剛性もしっかりしています。PCとはUSBで接続 192khz/24bitに設定し、Amazon Music HDからお気に入りの数曲を再生しました。

最初の印象は、レビューで見た通り、フラットな印象。特別な何かを感じるほどの印象はありません。音源に忠実に再生しているように感じました。ただ、ひっかかるのは、リボンツィーターが思ったほど仕事をしていない感じがするのです。まだエージングが進んでいないせいかもしれません。ELACのスピーカーで聞けるような透き通るような高音が聞こえてきません。もう少しエージングが進んで変化があれば改めて書こうと思います。

D90 vs A80

さて、一番気になるこれまで愛用したD90とどのくらい違うかという点。これは、唸らせられました。ONKYO D90 2万円弱がいかに素晴らしいスピーカーだったかを改めて知ることになりました。A80と明らかに違いがあります。ただ、違った試聴環境でいきなりD90かA80のどちらかを目を閉じて聞かされたらあてられる自信がありません。

D90はおそらくプラスチックの筐体に軽い素材のスピーカーです。内蔵のアンプ出力も15Wと小さく非力。が、しかし、前面についたバスレフポートのためか、低音はよく響くし、ツイーターの高音もこのクラスにしてはよく抜けています。ただ、どうしても筐体の素材のプラスチッキーな響きが薄くまとわりついているのがわかります。また、限られた素材で精いっぱいの印象を稼ぐべく周波数特性は私の耳で測ってもフラットではありません。その分、A80はモニタースピーカーというに近く、低域から高域までフラットで安定した音出しです。また、もう一つ大きく違うのは、音像の定位感で、A80のほうが中央に定位する精度が高く、音像が立体的に、よく高級オーディオでいうスピーカーではなく空中から音が出ている感覚に近いものを感じることができます。リボンツイーターのなせる業かもしれません。

結論

A80で行くのは間違いありません。が、D90を引退させるのが惜しい。この価格とこの大きさにしてこの音は間違いなくいいスピーカーです。そんな頃、ONKYOの債務超過のニュースが入ってきて残念ですが、ONKYOのクラフトマンシップの魂がこれからも生き続けてほしいと思った次第です。

中華DAC恐るべし!AK4497使用の高音質DAC TOPPING D70

その昔、中華デジタルアンプに手を付けた時、その価格に対するパフォーマンスに驚愕したものでした。1万円のパワーアンプは、20万円のAVアンプに搭載されるパワーアンプよりはるかにいい音を出していました。

その後、安価ならではの取り回しの不便さから最終的には手放し、現在は同じデジタルアンプである、PS AUDIO S300というパワーアンプに落ち着いています。

今では、これまで音楽も映画もゲームもすべてAVアンプメインだったのですが、さらに上の音質を目指すべく「DAC」を探しています。DAC選びと、TEAC UD-503にたどり着くまでの過程は別のブログに書いています。

今回手にしたのは TOPPING D70。USB、光、COAXIAL入力と、バランス、アンバランスの出力を持つごくシンプルなDACです。

高い前評判

かの、Audio Science Review では次のページでレビューされています。

https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/review-and-measurements-of-the-topping-d70-dac.7694/

ノイズや歪の計測で非常に精度が高く、ランキングでも上位に分類されています。これは期待できると。

とにかく音がいい

TEAC UD-503でもいい音を手に入れたと思ったのですが、さらにその上を行きました。言葉で表現するのは難しいですが、音の傾向はそのまま、さらに細部の音が表に現れてくるという感じ。ノイズフロアのわずかな差が表れた結果かと思われます。

TEAC NT-503の測定結果がこちらにあります。比較対象がTOPPING D30ですが、ほぼこれと同じような差があるものと思います。

https://www.audiosciencereview.com/forum/index.php?threads/review-and-measurements-of-teac-nt-503-networked-dac.2028/

とにかく安い

Amazonで5万5000円です。同格と思われる国内メーカーの TEAC UD-505 は15万円です。

消費電力が極小

100Vにつないだ電流計で、電源投入後のスタンバイ時で20mA、OPT-inで再生時でも60mAなど、これまでになく電力消費が少ないです。これには困ったことが1つあって、DACとパワーアンプの電源連動に使用していたサンワサプライの電源連動タップが使えなくなってしまったのです。サンワサプライのこのタップはパソコンと周辺機器の電源連動の用途で設計されているようですが、オン・オフを見分ける電流の閾値が100mAと書いてあります。TEAC UD-503の時はこれが使えていたのが、TOPPING D70になって使えなくなりました。電源オン時でも消費電力が100V100mAに満たないからです。これをどう解決したかはまた別のページで紹介します。

 DACというのはそもそも発展途上なのかという疑問

ここまでいい音のDACを探して奔走してきて思うことは、DACというのはそこまで難しいものなのかということです。デジタルで表現された数値を電圧や電流としてプロットするだけだろうと単純に考えるのですが、そこにはデジタルとアナログの間の埋められない溝の深遠な物語、ジッタ処理、そしてハードの実装方法まで複雑な要素が無数に絡んでいることがわかりました。

最近では、DACのチップは、旭化成のAKシリーズ、ESSのESシリーズ、高級ブランドメーカーは独自のFPGA実装などが大筋です。例えば、旭化成のDACは開発が1990年ころで、AKシリーズの AK4490は2014年に入ってからで、最新の AK4499まで5年ほどしか歴史がありません。世代を追うごとに向上しているということは、それはいい意味で発展途上であり、今後も数年単位で、性能、音質が目に見えて変わっていくだろうということが期待できます。そういう意味では、スピーカーやアンプなど長く使えるジャンルと違い、AVアンプと同様に技術変化の速いジャンルでそのスピードにキャッチアップしていくには数年ごとの買い替えサイクルも覚悟しないといけない宿命にあるんでしょう。

参考)

DACを造る“現場の創意工夫”が音に効く、旭化成エレ「AK4497/4493」の裏側https://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/1093585.html

AV環境の機材変更しました。

AVアンプ YAMAHA RX-A3060

パワーアンプ Emotiva A-300

スピーカー DALI IKON 6 MK2

 

AVアンプ YAMAHA RX-A3060

パワーアンプ PS Audio S300

スピーカー ELAC FS407.2

 2019年6月

AVアンプYAMAHA RX-A3060とAK4490 DAC搭載TEAC UD-503の組み合わせでピュア2chが幸せになれるかの実験

AVアンプからさらなる高音質を目指してすすむべき道は

かねてから所有の YAMAHA RX-A3060 AVアンプの2ch再生に物足りなさを感じていて、なんとかピュアレベルの2ch再生を組み入れられないかを模索している最中です。

フロント2chを外部パワーアンプにして、スピーカーも新調したところでしたが、肝心のAVアンプから出てくる音自体に関してアイディアがいくつかありました。つまり、DACとしての役割部分の性能の向上を図れないかということです。

1.Marantz AV8805の導入

現在使用しているRX-A3060を完全に置き換えます。AV8805は価格もさながらAV(プリ)アンプとしては最高峰です。DACはかの有名な AK4490 で、デジタルの再生環境、2chの再生共にグレードアップが期待できます。

問題は、このアンプが50万円近い高額商品であることと、AVプリであるため、サラウンドスピーカーすべてのチャンネルをカバーするパワーアンプを別途用意しなければならない点です。

また、一方で、AK4490採用でありながら、AVアンプというカテゴリの中で、単体の高級DACにどこまで近づけるものかどうかが疑問として残ります。

2.Marantz AV7705の導入

日本ではまだ販売されていないようですが、アメリカではすでに購入できます。DACは AK4458VN とラインナップでは下位のものですが、現在のRX-A3060に乗っている ES9016S よりは期待できます。AVプリですから、後の事情は AV8805と同じになります。

3.YAMAHA RX-A3080の導入

現在の構成のままAVアンプだけの入れ替えなので、手間としては一番楽です。3060→3080で、DACは ES9016S→ES9026PROに進化している点と バランス入力、フロント2chのバランスプリ出力がある点がアドバンテージになります。ただ、やはり、AVアンプのカテゴリの中、2chの再生ででいかほどの向上が見込めるのかは未知です。

4.YAMAHA CX-A5200の導入

RX-A3080よりやや上を狙えるような気がしますが、もともとフロント2chだけを外部パワーアンプにつなげられればいいと思っているので、諸事情はMarantzのAVプリと同様です。3080とDACを含め機能的な差がわずかでありながら、全チャンネルパワーアンプ調達問題があるということで、コストパフォーマンスに説得力が足りません。 

まず旭化成 AK4490 がいかほどかを知りたい

10万円を超える出費の前に、旭化成AK4490のDACチップがいかほどで、どんな傾向を持っているのかを聞いてみたい欲にかられました。そこで、巷で有名な TEAC UD-503 を中古で入手。

試聴の共通な条件

音源はFLACファイルでDLNA経由で同じファイルを UD-503 と RX-A3060で再生させます。UD-503にはChromecastの光出力を使用。これで音源の質としてはほぼ同じ条件で比べられます。RX-A3060はもちろんPURE DIRECTに設定。パワーアンプは PS Audio S300で、UD-503からはXLRバランスケーブルで、RX-A3060からはシールドのRCAケーブルで接続。スピーカーは ELAC FS704 VELAです。音量的にはクラシックは -22dbあたり、POPSなどは-30dbあたりです。

試聴パターンは3つ

パターン1

間違いなく一番いい条件で、いい音質が聴けるはずのパターンです。

パターン2

RX-A3060のアナログ入力を通してプリアンプとして働いてもらうパターン。アナログ信号がAVアンプ内を通過することで幾分か劣化すると思われます。

パターン3

RX-A3060の内部DACで再生する私の従来からの試聴パターンです。

試聴結果

パターン1 > パターン2 ~ パターン3

順当な結果となりました。というか、UD-503のきれいな音を聞いて、YAMAHAの上位クラスのAVアンプのDACがこの程度だったことに驚きと落胆がありました。

こうなると、私が進むべき道は絞られてきました。

1.AVアンプ1本を貫くためとにかくAVアンプの最高峰を目指す。Marantz AV8805路線。UD-503と同じDACを積んでいます。

2.AVアンプで音質を極めるのは諦めて、良質の単体DAC探しの旅に出る。

 

しばらくして、1を諦めさせる出来事、というか事実が判明したため、残る2の道しかないという結論に。これは別ページで語ります。

 

 

 

CD音質のロスレスストリーミングサービス Deezer は確実に高音質!だが月1960円の価値はあるか?

Google Play Music との比較で語ります

当方は長らく Google Play Music の愛用者で、普段は、部屋のオーディオシステムで聴いています。参考までに、その構成は

  • Chromecast Audio(光ケーブル) または Chromecast Ultra(HDMI)
  • YAMAHA RX-A3060 AVアンプ
  • Emotiva A-300 メインアンプ
  • DALI IKON6MK2 フロアスタンドスピーカー

音源の質にもよりますが、Jazzやクラシックで、そこそこいい状態のものであれば、AVアンプの設定は

  • Music Enhancer ON
  • YPAOボリューム ON
  • 音響プログラム Straight

の状態で聴いています。(2chでは風呂と呼ばれるYAMAHAのAVアンプですが、80年代JPOPなど音の細い録音を聴くときに音響プログラムがボリュームと臨場感を加えてくれるものという考えです。)Google Play Musicの音質は MP3 320kbps 相当と言われていますが、総じて音質には満足していました。Googleのサービスは機能的にも充実していて、Androidスマホでのオンライン・オフライン再生、Google ChromecastやChromecast Audioへのストリーミング、ライブラリや、レコメンド、検索機能は秀逸です。

そこで飛び込んできたのが CD音質のロスレス再生を誇る Deezer という音楽サービスです。さっそく、1か月の試聴を申し込みました。

 

Deezer は確かに高音質。その差は低音に顕著に現れる。

Google Play Musicと音質を比較すると、ザラザラした背景が引っ込んでより音像がクリアになっていることにすぐに気が付きます。また、低音域が一番顕著に表れるところで、ベースラインがくっきりはっきりしています。これが圧縮音源と本来のCD音質かと思い知らされる瞬間でした。

ただし、この差がどんな再生環境でも現れるものかどうかは考えてみなければなりません。たとえば、iPhone と AirPods で音楽を聴く場合、音源がどんなに高音質であれ、AirPodsへ無線で転送された時点でAACコーデックの圧縮データに逆戻りしてしまうわけで、CD音質ロスレスサービスで使う意味がそもそもありません。

また重厚なアンプやスピーカー環境ではなく、卓上のミニコンポ、PCの両脇に置いた小さなスピーカーでの再生では、果たして有意な差があるのかも気になります。

音質以外でGoogle Play Music にかなうところは1つもなし

残念ながら、CD音質(後で検証しますが)以外、再生アプリの完成度、検索機能、レコメンド、ライブラリの操作性、音源の数(JPOPはかなりの率で入っていない)で、Google Play Musicにかないません。再生アプリは、かろうじて Chromecastへのキャストしての再生に対応していることで、高音質をそのままに手持ちのアンプやスピーカーで聞くことができます。

Chromecast または Chromecast Audio を通してAVアンプで聴くのがおすすめ

YAMAHAのAVアンプはSpotifyやDeezerなどのストリーミングに対応しており、MusicCastというアプリと連携して、スマホからの操作で音楽を再生することができます。ですが、これがなかなか、アプリの操作性はいまいち、ストリーミングとは思えないレスポンスで、再生指示をしてから待たされること数秒~数十秒、GooglePlayMusicになれた人からするととても我慢できない代物でした。

結局のところ、一番お勧めの視聴環境は、スマホ(当方Android)の Deezer から Chromecast か Chromecast Audio キャストすることです。Deezerに関して、Chromecastを通すとHQ(最高音質)再生に対応していないのではないかという情報もありましたが、現状では、HQの再生が可能です。ロスレスのままアンプの DAC へつなぎますから、一番いい条件で聴けることになります。

音質比較表

再生環境とDAC、スピーカーのの組み合わせをいろいろ試してみました。ポイントは、Deezerの高音質とGoogle Play Musicの音質に差がはっきり感じられるかどうかという点です。実際、どちらの音質もかなりいいので、★の数は、あくまで差を段階に分類したものです。また、耳を凝らしてじっと聞き比べても差があるのかどうかわからないものは同点、または気持ち程度の差を+で表してあります。

大まかには次の試聴形態で、

  • AVアンプで最高品質で聴いたもの
  • AVアンプだがBluetoothレシーバーを通したもの(AACや aptXに圧縮される)
  • スマホのイヤホンで聞いたもの(ロスレスだが、AndroidOSのミキサー経由、イヤホンのDAC依存)
  • 卓上のアクティブスピーカーONKYO GX-D90で聴いたもの(aptX Bluetoothレシーバーの光出力)

となります。

GX-D90は1万円台のアクティブスピーカーで光入力があります。aptX Bluetoothレシーバーは HS-BMR002という超小型のDACですが、この光出力を GX-D90 へ送って試聴します。

Sound Source Receiver Amplifier Speaker Score
Deezer(HQ) Chromecast Audio(Optical out) RX-A3060 + A-300 IKON6MK2 ★★★★★
Google Play Music(320kbps MP3) Chromecast Audio(Optical out) RX-A3060 + A-300 IKON6MK2 ★★★★
Deezer(HQ) Bluetooth (AAC on RX-A3060) RX-A3060 + A-300 IKON6MK2 ★★★
Google Play Music(320kbps MP3) Bluetooth (AAC on RX-A3060) RX-A3060 + A-300 IKON6MK2 ★★★
Deezer(HQ) Chromecast Audio(Optical out) - GX-D90 ★★
Google Play Music(320kbps MP3) Chromecast Audio(Optical out) - GX-D90 ★★
Deezer(HQ) Bluetooth(aptX on HS-BMR002) - GX-D90
Google Play Music(320kbps MP3) Bluetooth(aptX on HS-BMR002) - GX-D90
Deezer(HQ) USB-C earbuds - USB-C earbuds ★★+
Google Play Music(320kbps MP3) USB-C earbuds - USB-C earbuds ★★

 

結局のところ、一番最初のオーディオシステムをフルに生かし切った構成で聴いたものしかGooglePlayMusicとの差異は優位に感じられないということになりました。

補足1)

MacOSやWindows上で再生する場合、通常OSのミキサーを通りますから、若干音質のロスが生じます。(特にOSXのミキサーはひどいらしい)Deezerのプレーヤーが対応できるかわかりませんがサウンドデバイスを排他的にオープンできる設定が理想です。また、OSのミキサーを通る場合でも、音声出力のビット数と周波数を24bit/96kHzなどに上げるのも効果的ははずです。

AVアンプをピュアレベルにパワーアップする Emotiva A-300

Emotiva とはアメリカのオーディオブランド

AVアンプとしてはハイエンドであるはずの YAMAHA RX-A3060 を手に入れたものの、メインアンプの音の貧弱さに満足できず、安価で有力な外部パワーアンプを求めていたところ、中華アンプ Indeed TDA7498Eに出会い、それでも DENON の中堅プリメインに勝てないことを知るも、さらにコストパフォーマンスのよいアンプを探していました。そこで、出会ったのが・・・ Emotiva というブランドでした。

Emotiva はアメリカはテネシー州フランクリンにある会社で、安価でありながら高品質のオーディオ製品を開発しています。

https://emotiva.com/

1チャンネルのモノブロックから多チャンネルのパワーアンプ製品、DAC製品、スピーカー、アクセサリなどなどを直販しています。アンプに関しては、いわゆる1つになった、プリメインのラインナップではなく、プリアンプと、ボリュームツマミさえない「パワーアンプ」のセパレートが特長になっています。

また、スピーカーのラインナップは、10万円以下の価格でありながらELACで採用されているようなリボンツイーターである、AMTドライバー(ハイルドライバー、JETドライバーとも言う)が使われている製品があり、音質も含めて気になります。

日本では取り扱うディーラーはありませんが、Emotivaのウェブサイトから直販、あるいは、アメリカの amazon.com からも購入して日本へ直接配送させることができます。※2017年12月現在 A-300 は在庫切れの様子。相当な人気をうかがわせます。

スピーカー製品も気になりますが、今回の注目はパワーアンプです。

BasX シリーズ A-300 はまさにAVアンプのお供のためにあるような仕様

ラインナップの中では後発の BasX という入門クラスのシリーズの一つに 2ch パワーアンプ A-300 があります。主な仕様は

2チャンネル 入力はRCAのアンバランス 150W(8Ω) 300W(4Ω) の出力 スピーカーは 4Ω から対応。 周波数特性 5 Hz to 80 kHz (+ / – 1.8 dB) ダンピングファクターは 500 (8Ω) 12Vのトリガー入力があり、AVアンプ側が対応していれば、電源の連動が可能。 AC電源は 115V 230V の自動認識。(日本の100Vでも一応動作します。)

価格は 399USD (45,000円ほど) 送料別

ボリューム、リモコンなどが一切ないシンプルなパワーアンプです。

Emotiva A-300の英語で書かれたレビュー記事も数少なく、日本語レビューは現在のところネット上で見つけることはできません(2017年11月現在)。

参考)レビュー英語

http://www.enjoythemusic.com/magazine/equipment/1016/Emotiva_BasX_A300_Amplifier_Review.htm

ピュアオーディオの入り口に立った感

当方オーディオの評論家ではないので絶対評価をめくるめく言葉で言い表すことはうまくできません。相対的な評価をあえてするなら手持の YAMAHA RX-A3060 の内蔵のパワーアンプと比べて雲泥の差があるということです。また、しばらく使っていた中華アンプ Indeed TDA と比較しても圧倒的な解像度と安定感があります。

ここに来て具体的に初めて体験できたことをいくつか紹介します。

  • 2ch だけの再生で左右だけでなく、前後左右に広がる音場を感じる  従来(AVアンプだけ、あるいは中華アンプ)では、左右の位置感覚というのはなんとか聞こえていました。例えばボーカルが中央に定位し、楽器がより正確に方向が定まるというのが左右の定位でした。しかし、前後感覚というのは、あまり感じていなかったと気が付きました。ここに来て新たに、前後感覚が加わり、ライブ録音などでは、観衆の拍手が自分自身の横や、後ろにまで広がるのが感じられました。

  • マルチチャンネルの映画で、音のつながりがより自然に感じる  ATMOSとかでない、ただの5.1ch仕様のムービーですが、左右に流れる効果音、爆発などがよりスムーズに流れて聞こえるようになりました。外部アンプの導入はフロントの 2ch だけだったわけですが、結果として、全方位で音の定位感が増したという結果となりました。ピュアよりもAVアンプ派としては、うれしい収穫でもあります。

  • 男性ボーカルの声がさらに中央に定位する  男性と女性では、一般に1オクターブの音程差があり、女性の声の方がより左右の位置感覚がよいように感じます。一方で、男性ボーカルでは、それが不確かになり、場合によっては、左右に散らばって、真ん中から聞こえないこともありました。例えば、具体的に、マイケルジャクソンの声は、比較的高く細いので、真ん中からよく聞こえます。一方で、玉置浩二の声は、低く唸るような声と、ハーフトーンのざらついた高域成分の2つからなっていて、なぜか左右に広がってしまう傾向にありました。これが今回、中央に寄ったということで、より中、低域での音の再現度が向上したことによるのだと思っています。

YAMAHA のAVアンプと相性ぴったり

A-300は Emotiva の中でも、BasXと呼ぶだけあって、入門(あるいはミドル)クラスの位置づけです。ピュアを突き詰めるには、内容的にも、価格設定的にも中途半端なのですが、AVアンプと組み合わせた時には絶大な付加価値を生み出す潜在力があります。

YAMAHAの AVアンプには電源と連動する 12V のトリガー出力があります。A-300のトリガー入力を使うことで、AVアンプと電源連動して、AVアンプのパワーアンプとして働くことができます。見渡すところ、ミドルからハイエンドのプリメインに、外部から電源連動させる仕組みがあるのは、YAMAHAくらいで、気になっていたDENONのプリメインにはそういった仕組みがありません。それどころか、DENONの最新のラインナップでは、パワーアンプモードが省略されているようで、AVアンプと連機できない方向に向かっているように見えます。

YAMAHA の AVアンプのラインナップのうち、RX-A870以上はプリアウトがあり、外部パワーアンプとして組み合わせることで音質面でグレードアップができることになります。

コストパフォーマンス的には RX-A30x0 1台を買うよりも RX-A10x0 とこの Emotiva A-300 を組み合わせたほうが圧倒的に音質面で得をするのではないかと思っています。

多くのレビューに、「値段の割に」という断りが付いていますが、高級オーディオの領域に一歩踏み出せる1品です。

多チャンネルホームシアターとピュアオーディオの両立は無理と言われても1つで音質も欲張りたい自分がいます。一小市民としては、ネットワークオーディオ、映画などの機能的な部分重視な結果、音質も追求したい一方で、軸足はAVレシーバーにあります。それでも、なるべく安いコストで、良質を求めつつ、機材の占有スペース、消費電力にも気を遣うエコシステムを追及するもので、同じ機能を持つ機材はなるべく2つと持ちたくないと思っています。その点でも、この機種はちょうどいいポジションにありました。

YAMAHA AVアンプ(RX-A3060)に一言いえば

DACにESSの高級チップを採用し、3070 ではついにバランス入力まで備える高機能ぶりでも、最終段であるパワーアンプで音質が台無しになってしまっているのは残念です。

フロント 2ch だけ特別仕様のアンプはだめ?

多くの方が同じではないかと思いますが、ホームシアターを 5.1ch 7.1ch で構成していますが、住宅事情と経済事情でスピーカーは、フロント2chのみが大きいスピーカーで、その他サラウンドスピーカーは、小型のものにしています。一方で、AVアンプは、どこのメーカーも、全チャンネルが同じ仕様で構成されています。理想と建前としてはそれでいいのかもしれません。しかし、映画にしても音楽にしても、真後ろを向いて同じコンテンツを同じ音質で聴こうとは誰も思いません。多チャンネル化のせいで、どうしても1chあたりのコストが限られるのであれば、全体を一定のコストに収めるべく、せめてフロント2chだけでも特別仕様のパワーアンプを積んで、残りは音質傾向をなるべく維持しつつより小さいアンプにするという選択肢があってもよいのではないかと思いました。

いっそ全チャンネルデジタルアンプにしたら?

最近になって、YAMAHAやDENONからD級アンプ(デジタルアンプ)の製品が出てきました。小型ながら、フロアスタンドのスピーカーを鳴らすほどのパワーがあるだけでなく、音質面でも定評です。AVアンプの宿命上、マルチソース、映像処理、WiFiにBluetooth、LANにインターネットなど、1台のPC以上の機能を詰め込み、それに加えて、9chのパワーアンプを従えるというのは、サイズ的にもいっぱいいっぱいであるのは理解できます。デジタルアンプが順調に高音質に成長できるたのであれば、全チャンネルD級のAVアンプがあってもいいのではないかと思います。Pioneerの VSX-S520、ONKYO TX-L50 などマルチチャンネル対応で、デジタルアンプを使った製品がありますが、あくまでローエンドの位置づけで、現在のYAMAHAのAVアンプラインナップと互角に検討できる相手ではありません。